SSブログ

劇団四季「ウィキッド」3回目観劇記(1):進化した芝居と見方の変化 [観劇の記録]

2007年8月19日(日)ウィキッドのマチネ公演を観劇してきた。開幕直前プレビュー公演、初日公演につづいて3回目の観劇。初めの2回でかなり気に入ったので早く次をと思いつつ、機会に恵まれず、2ヶ月ぶりとなった。

まず、汐留に付くと、観劇前に周囲を観察。


前回観劇後、「出したらいいのに」と話していた魔法使い張りの緑の飲み物を実際にウィキッドカフェで出しているとネットで知ったので、その確認。緑といえばキウィヨーグルト位だったが、想像とはちがった(^^;でも、ウィキッドカフェではビニール入りのウィキッドコースターをくれた。

2ヶ月ぶりの汐留カレッタは微妙に変わっていた。エメラルドファンタジーは健在だが、2Fの洋服屋さんがつぶれた跡に展示場ができていたり、(子供向け)クイズイベントがあったり。自分も、しっかりと昔懐かしいチューブ入りのバルーンを当てた(^^)v

やはり2ヶ月とはいえ、時は流れている。
 

だが、この2ヶ月、復習には余念がなかった。オリジナルBW版のCDを購入して延々ウォークマンで聞き続けていたので、もはや曲はすべて耳に定着している。曲を聴きながら、場面を繰り返し想起することも忘れない。いろんなブログをチェックして、作品や役者に関する様々な見方、感想もふむふむと勉強した。何度も観るうちに変化する見方や発見もあるようだ。そして、最近の芝居のできなども、事前情報として得ている。

準備万端、自然と期待も高まる。

3回目の観劇。自分の中でこの作品は変わるのだろうか?深まるのだろうか?

今回は,前2回との差分を記すことにしたい。自ずとネタばれ多数。基本的な作品評、キャスト評、音楽評などはむしろ、過去のブログを参照していただきたい。

まず、あらかじめ総評としていっておきたい。確認したこととして、やはり自分はこの作品が好きだ。すばらしい作品だ。待望の観劇にそれこそ今回も感激だった。沼尾グリンダ、成長していた。ワンダフル。濱田エルファバ、文句なし。グレート!
その上で、3回目の観劇として、感じたことが大きく3つある
  1. 芝居が進化していた。それに伴って、自分の受け取りかたも変化した。
  2. オーバーチュアで涙が出た。「ウィキッドスパイラル」の予感がした。
  3. 思えば拙い演技ながらも初日の高揚が懐かしくもあった。
それぞれの項目を熱めに語りたいのと、平日で書く気力の問題もあるので、自分の観劇記には珍しく、分割して連載としたい(オイオイ)m(__)m
で、今回は、「芝居が進化していたこと。それに伴って、自分の受け取り方が変化したこと」について。キャストは以下の通り。 キャスト表 女性アンサンブルに一部変更があったものの、メインは初日と変更なし。
  • 進化した芝居
    芝居が進化したのは、開幕以来大きなキャスト変更がないことが効を奏していると思われる。各役者の芝居はすっかり板に付き、初日とは見違えるほど自然で、細やかな演技が見られた。
    たとえば、沼尾グリンダ。これまでの自分の評価を一転させ、好きな役者に転じたグリンダ役ではあるが、初日には四季発声が耳につき、"Popular"のシーンでのはじける脳天気ぶりはかなり痛々しく、元来もたないものを演じる悲壮感が漂っていた。しかし、今回その印象は払拭され、根っからの陽性の性格のグリンダがそこに居た。まさに、キラキラしていた。もう、発声も気にならない。"No One Mourns the Wicked"で悪い魔女を語る時の微妙な表情、フィエロが去り、立場が逆転した"I`m Not That Girl (reprise)"では、その心情が静かだが確かに伝わってくるようだった。そして"For Good"、エルフィとの間の空気は静かで落ち着いたものとなり、心の深い部分で相手を思い、語りかけるような印象を受けた。初日は、感極まって爆発しそうな二人の間の空気だった。ここはどちらがよいとも言いがたい部分であるが、役をこなし、足に地が着いた結果には違いなく、明らかに進化だろう。
    濱田エルファバは一層パワーアップという印象だ。"Defying Gravity"は、BW版CDを聞き続けていた分、違和感やもの足りなさが感じられないか心配だったが、全くの杞憂。Idina Menzelと濱田めぐみは明らかに異なるが、優劣の問題ではなく、もうひとつのオリジナルと感じられる。舞台を目の当りにすると圧倒的な迫力に背筋に寒気がはしって、鳥肌がたつ。CDだけで聞いているのとは比較しようもない強烈な印象を与える。濱田の勝ち!って感じだ。これまで、印象に残らなかった"The Wizard and I"の長い長いソロも、初めて人生に光が差した喜びや、未来への希望が表情に全身に表れ、思わず引き込まれてしまった。2幕にはいっての追い詰められての弱気、何をやっても裏目にでるやりきれなさがよーく伝わるようになってきた。前回は悪い魔女になってやるという開き直りが鬼気迫って、怖えーー!とだけ思っていた"No Good Deed"が、今回、弱気、やるせなさとの対比、変化が見事に際立ち、訴えるものも大きければ、死を演出し友と別れを告げる一連の流れに勢いと説得力を与えていた。
    その他、まだ、学芸会っぽさが残るものの小粥ネッサも歌やボックへの感情表現はましになっていたようだし、李フィエロの抜ける濁音もあまり気にならなくなってきた。アンサンブルも心なしか安定感が増したように思えた。
 
  • 観る自分の変化
    二人の演技が練れたことと、2ヶ月の復習、3回の積み重ねで、"The Wizard and I"、"I`m Not That Girl"、"I`m Not That Girl (reprise)"など印象の薄かった歌と場面が心に残るようになった。"Populer”や"No Good Deed"は前回と異なる印象を得た。すると、これらの変化により、自分の中での二人の人物像や二人の関係が違って見えてきた
    前回まで、グリンダは人気者のアイドルで典型的に物語に出てくる人だった。一幕は本当のオバカで自己中だった。エルフィへの親切にも欺瞞が感じられたし、エルフィとフィエロにある恋心に鈍感で、フィエロが去った時、エルフィに罵られた時、嫉妬と素の憎しみが見えていた。紆余曲折を経て、幾多の苦難を乗り越え、最後に真の友情を培って、悲しく大きな使命を背負う。その物語は、成長物語だった。エルファバはというと、生まれながらのハンディに苦しむ可哀想な存在。迫害に立ち向かう勇敢なヒロイン。こちらも、いかにも物語に出てくる悲劇のヒロインだった。その物語は、不当な権力と社会の悪意に追われていく、悲劇だった。
    今回、グリンダはむしろ普通のカワイイ娘だった。根っからの陽性な善人だった。みんなと一緒に意地悪もしたが、根が善人なので、可哀想で親切にする。自己中でないので、みんなの幸せを考えると、身の振り方は政治家と自ずと同じになり、妥協も必要、和をもって尊しとする。善い魔女に祭り上げられるのも必然だ。見事に成長したわけじゃない。鈍感じゃないからフィエロの気持ちも知っていたし、去った後も嫉妬より寂しさ、エルフィに罵られても真の憎しみなどは起こりえない。苦難を乗り越えて友情を築きあげたわけじゃない。エルファバはといえば、誕生悲話はあるものの、すぐに魔法の力で希望の光が差す。罪の意識は語られるものの、結果、親友もできる。まんざら、可哀想なばかりの人生じゃない。そして、直情的でおっちょこちょいだ。動物の件でカッとして迫害には負けないと大見得きったくせに、弱気になって家族に助けを求めたり、敵との和解の誘惑にぐらついたり。弱気の末に開き直って死を演出して姿を消すが、動物を救い国を変える初志はどこへやら。絵に描いたようなヒーローとはいえない
    今回の二人は、物語らしい特別な人たちじゃなく、とてもとても普通な人たちだ。その分、身近に感じる。また、二人の友情も実は不動だ。エルフィのおっちょこちょいで、道を分かったり喧嘩をしたり、でも変わらぬ信頼や相手への思いやりが常にある。泣きどころの"For Good"も初めて分かった深い友情じゃない、安定した信頼を確認しあう場だ。耳に残るようになった詩的な訳、「せせらぎを分かつ岩のように」とか「何とかをいざなう、風のように」とか大きな大きな流れの中で育まれた、深く安定した信頼を思わせる。その分、涙がとまらないかと思って構えていたが、静かにホロッときたのが今回だ。
自分の見方は、皮肉にも「劇的な存在と感動」から「身近な存在と共感」に変化した。局所的涙の量が減った代わりに、二人が余計可愛く見え二人の関係がもっと好きになった。今、自分がフィエロだったら、どちらも選ばず身を引いて二人の友情を大事にしたいと思うだろう。

今日は、ここまで。

明日は、第2の感想、
2.オーバーチュアで涙が出た。「ウィキッドスパイラル」の予感がした。 について。
参照>>『劇団四季「ウィキッド」3回目観劇記(2):ウィキッド・スパイラル』

続く。。。

劇団四季公式HP :http://www.shiki.gr.jp/
ウィキッドスペシャルサイト: http://wicked.jp/index.html

■公演日程 2007年6月17日(日)開幕~ロングラン公演
(2008年4月6日公演分まで発売中)
■会場 電通四季劇場
■料金 S席/11,500円 A席/9,450円
B席/6,300円 C席/3,150円
■予約方法 0120-489-444(劇団四季予約センター)
■問い合わせ 03-5776-6730(劇団四季東京公演本部)

 

いろんなblogにみるウィキッドの「進化」や「変化」;

  • 日々是ツブヤキ 愛しているのに救えないのは何故:友人のAYAさんの8/21(火)ソワレ観劇記『全体的に台詞回しとか変わってた。役を演じているんではなくて、生きている、という気がしました。至る所でそう思えました。メインの二人に特に。』

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(5) 
共通テーマ:演劇

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 5

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。